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インタビュー坂本さん表紙




科学研究をおこなう上で、資金は必要な物です。大学などの教育機関や公的研究所では運営費が交付されていますが十分な額とは言えず、研究者は毎年、競争的資金などに応募して研究費を調達しています。

国が助成する競争的研究費の中で最も大きいのは科研費(科学研究助成金・学術研究助成基金助成金)であり、毎年9~11月にかけて文科省のwebシステムであるe-Rad上で申請をします。10万件超の応募から約3万件が採択される一方、約7万件が不採択になる非常に大規模なものです。

この不採択となった申請書を元に、民間企業とアカデミア研究者のマッチングをおこなう『L-RAD(エルラド)』が、サービス開始から1年を迎えました。そこで、L-RADの開発・運営をおこなってる株式会社リバネスの坂本さんにお話を伺います。


L-RADを開発したきっかけ


オープンイノベーション

「今年から始まった、国の第5次科学技術基本計画(2016-2020)では、オープンイノベーションの活性化がテーマとなっており、民間企業と教育機関や公的研究機関の連携が求められています。
現在、製薬会社を中心に公募プログラムを活用したオープンイノベーションが積極的におこなわれています。これは、企業側が研究テーマを設定しwebなどに公開、そのテーマに合致した大学などの研究者が応募することにより、産学共同研究を実現する仕組みです。
しかし、大学発のオープンイノベーション、つまり研究者の「こんな研究をしたい」に対して企業がアプローチするタイプの共同研究は、学会発表などをきっかけにしているケースしかありませんでした。


L-RADオープンイノベーション

そこで、有用な技術シーズを求める企業に研究者側からアピールできる場があったなら、更にオープンイノベーションが加速するのではないか。
研究者のアイディアが最も多く集まっている場所は、科研費の応募窓口では?と思いつきました。科研費はe-Radというwebを介して申請をおこないますので研究者のアイディアはweb上にある。しかしe-RADは非公開なので、中にあるアイディアは例え不採択の物でも閲覧することができず、誰の目にも留ることがない。e-RADの中には、いったいどの様なアイディアがあるのだろうか、と興味が湧きませんか?」

確かに、科研費だけで毎年10万件の申請があり他にも多くの競争的研究助成金があるので、全ての申請書を合わせると膨大な研究アイディアがある。そして科研費の不採択7万件を始めとして、多くのアイディアが未活用のまま埋れている。これら未活用のアイディアを企業と共にうまく活用する事で、オープンイノベーションが一気に加速されそうです。



どのように“未活用のアイディア”を活性化させるか?



「L-RADは大学などの研究者は無料で入会でき、研究費の申請書をL-RADサーバーにアップロードします。民間企業は有料で会員企業となることで、L-RADサーバー内の申請書を閲覧できます。興味のあるアイディアに対して直接メッセージを送り、研究についての詳細確認や共同研究に際しての交渉を進める事ができます。
研究者のアイディアがベースのため、従来の企業側がテーマ設定をおこなうオープンイノベーションに比べ、自由度が高い研究テーマが集まる特長があります。」

L-RAD概念


スタートからまもなく1年


「全く新しいシステムのため、当初は仕組みを理解していただくのに十分な説明が必要でしたが、現在は220以上の大学や研究機関の600人を超える研究者が会員になっており、日々増加しています。また、閲覧できる申請書数は、今年度中に1000件を目指しています。会員企業も日本たばこ産業(JT)、大塚HD(大塚製薬ほか)、田辺三菱製薬、ジェイテクトが既に入会し、今後さらに増加する見込みです。」

アイディア盗用の懸念


研究者からは、自身発案の初期アイディアを企業に閲覧させる事による「アイディアの盗用」を心配する声があると聞きます。その点についてどの様な対策をされていますか?

「研究者のアイディアを閲覧した企業が、そのまま独自に研究を進めてしまうのではないか?という懸念は当初からありました。そこで、“見た/見てない”という争いを避ける仕組みを取り入れました。それは情報の2段階開示です。会員企業はまず申請書の“基本情報”を閲覧します。基本情報とは、大まかな概要を中心とした“閲覧されても問題が無い範囲”の内容であり、申請者(研究者)の所属や氏名も伏せられています。この基本情報を見て興味を持った企業は、「詳細情報を見る」をクリックする事で、研究者の氏名や申請書自体を見る事ができます。この時、研究者には「何時何分ABC社が閲覧」という情報が届く様になっており、双方がお互いの閲覧を認識できる仕掛けです。
また、会員企業にも制限を設けており、研究開発機能を有する企業に限定しています。調査会社やコンサルティング会社、投資ファンドなどがアイディアを閲覧しても共同研究が始まることは殆ど無いと考えているからです。あくまでも共同研究を通じて研究者が研究費を獲得し、オープンイノベーションが加速するきっかけを提供したいと思っています。」

基本情報には研究者の氏名が含まれていないのですか?
「研究の規模感(必要と思われる予算や期間)は、基本情報に掲載されていますが、所属(大学名など)と氏名は、詳細情報にのみ掲載されています。これは、研究者の名前でアイディアの価値にバイアスが掛かる事を避け、実績の少ない研究者でも純粋にアイディア(内容)の価値で勝負できるようにしたいとの思いから、この様な仕様にしました。」



L-RAD公開範囲



不採択アイディアの価値


科研費で不採択になったアイディアを、企業が興味を持って閲覧し、共同研究に発展する可能性があるのでしょうか?

「科研費の採択はアカデミック軸の判断、つまり“国が助成して研究すべきか?”という視点が中心です。科研費は、国の研究助成の中ではテーマの自由度が高いため、不採択となった約7万件の研究アイディアを、産業応用という企業目線で再評価した場合、価値ある物が含まれていると考えています。
また研究者の自由な発想から集まったアイディアのため、企業が現在直面している課題に対する解決法の探索だけでなく、中長期計画としてのパートナー探しという利用も想定しています。企業は、自社の専門分野については最先端の研究をされていますが、別の研究テーマや異分野への進出時など、長期的なパートナーやアイディアの種を探す事に苦労されていると聞いています。そのきっかけに活用できるのではないでしょうか。
また、企業側には研究の初期から関わっていたいという希望があります。学会などで発表して公になる前に研究者と繋がる事で、他社に先んじることが可能だからです。」

L-RADには科研費の不採択申請書しかアップロードできない?


「科研費は、毎年約7万件という大量の不採択申請書が生まれるため例示していますが、科研費以外の公的な競争的資金、財団等の研究費、企業が実施する公募型プログラム等に応募した申請書もL-RADでは受け入れています。申請書はPDFでアップロードしますので、どの様なフォーマットでも構いません。また、新規に科研費を申請して、まだ合否が分からない段階でのL-RAD掲載も可能です。この場合、科研費が採択された際はL-RADへの掲載を取り下げていただく様にお願いしています。
もちろん、まだどこにも出していない秘蔵アイディアのアップロードも歓迎いたします。」


共同研究にむけて


企業側からアプローチがあった場合、共同研究のテーマ設定や大学の事務局との調整、契約などはL-RADがやるのですか?その時に費用は発生するのでしょうか?

「L-RADは、不採択申請書をベースにした“出会いの場の提供”と考えています。
興味ある申請書をきっかけに企業と研究者が直接連絡を取り合い、話し合いを重ねるうちに、全然違うテーマで共同研究に至っても全く問題ありません。また、契約は従来通りの各校・各社の産学共同研究のルールに従い、事務局などと進めてください。L-RADを含めた3社契約や成功報酬などは必要ありません。」


申請にあたって準備する物


「新たに準備していただくものは特にありません。これもL-RADの大きな特長です。研究者が研究費に応募するたびに、それぞれの申請フォームに合わせて、目的や規模、期間、などを作成しています。私達がヒアリングした中で最も多かった研究者は、年間40件応募していました。つまり40通の申請書を作製した事になり、研究時間リソースを大きく削いでしまっています。 そこでL-RADは専用の雛形を設けず、以前に作成した申請書をそのままPDFでアップする事で、時間を無駄にする事なくセカンドチャンスを掴める仕様にこだわりました。」

今回、お話を伺って、科研費を始めとした競争的研究資金の採択率の低さを再認識すると共に、「オープンイノベーションを推進する」という国の政策の元、過去の申請書をそのまま活用して民間企業にアプローチする、この新しいシステムは非常に興味深いものでした。将来的には国の予算申請はe-RAD、民間との共同研究はL-RADとなり、研究器材の選定にKEYSTONEのデータベースが活用されるという未来を想像しました。


リバネス 坂本真一郎


株式会社リバネス
執行役員
坂本 真一郎 様

東京大学新領域創成科学研究科 博士後期課程単位取得退学 修士(理学)
(株)リバネスの創業から関わる「社員第一号」
2012年 同社執行役員CROに就任




リバネス

株式会社リバネス
2002年6月設立 資本金6000万円 社員数56名(2016年5月現在)
15名の理工系大学院生が集まって設立された日本初の科学教育ベンチャー。
社員すべて理系の修士・博士号取得者で構成されている。
専門知識を持つ人材の育成を通じて、科学技術と社会をつなぐ事業を展開。
企業の新規事業開発コンサル業務などを行っている。
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L-RAD


L-RAD(エルラド)は、
(株)リバネス、(株)池田理化、(株)ジー・サーチ3社の共同事業で、
各種競争的研究資金に採択されなかった申請書など、
研究者が持つ未活用のアイデアを集積し、産業視点で再評価することにより、
研究者と企業を結び付け、産学連携、共同研究を実現します。
研究者にとっては研究資金調達、企業にとっては研究者が持つ初期のアイディアへの
アクセスを可能とするオープンイノベーション・ソリューションです。
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