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細胞シートと共に治療に結びつく研究を(後編)

再生医療技術の一つとして注目を集める細胞シート。温度応答性培養皿「UpCell®」を用いて細胞シートを作成し、血管ネットワークの形成メカニズムを明らかにした東京女子医大の関谷佐智子先生(前編はこちら)。組織工学的なアプローチで治療法の研究に携わるその眼差しには、一体何が見えているのでしょうか。

腎組織の再構築にむけて


現在、関谷先生は腎臓の中の糸球体や尿細管の周囲の特殊機能を持つ血管再生の他、血管以外の“管”の再生を目指し、腎組織の再構築をテーマに研究を進めています。

「現在日本では、徐々にまた不可逆的に腎機能が低下し、腎機能15%以下になると血液透析治療が必要となる慢性腎臓病が増加しつつあり、30万人の末期腎臓病患者が血液透析治療を受けています。透析治療は確実な治療法ですが、患者のQOLの低下や長期透析による合併症の課題があります。腎移植治療は圧倒的にドナーが不足しており、腎臓の再生は非常に多くの方から待ち望まれています。また 腎臓の組織は他種類の細胞から成り立つ非常に複雑な“管”の集合した構造をしており、生体外で管腔を作るという自身の組織工学研究の延長上で人の役に立つものが創れるのではないかと考えたのがきっかけでした。」と関谷先生。

腎臓.png
Licensed under CC-BY 4.0 ©Togo picture gallery by DBCLS


関谷先生が最初に着目したのは、成体腎に存在することが報告されている糸球体上皮細胞などの体性幹細胞です。この体性幹細胞を組織工学的に利用して腎組織が再生できないかと考え、成体腎から腎臓の細胞を初代培養し細胞シートを作成したところ、管腔構造様組織が確認されました。腎臓はただ血液を濾過して尿を生成する組織ではなく、活性化ビタミンD3の合成やエリスロポエチン発現機能も担っています。生体外でもこのような機能が確認されたため、腎細胞シートを生体に移植すると移植組織からのエリスロポエチンの発現を確認し、移植された成体が貧血症状を示すとエリスロポエチンの発現が上昇しました。一方で管腔構造は出芽様構造を形成し、より複雑な「血管とは異なる管」を構築しましたが、糸球体形成は観察されませんでした。そこで、ネフロン構造の構築を行うために、関谷先生は現在胎児期の腎臓細胞を用いて、腎組織再生技術の構築技術を検討しています。現在盛んに研究報告されているように、iPS/ES細胞より胎児期の腎細胞の分化誘導が確実となった次には、計画的に組織構築し、血管と連結・尿が採取できるような管を付随した腎組織の構築技術が必要となります。「例えば15%以下の腎機能となった場合、再生組織を移植、血管連結するだけで直ちに10%だけでも機能回復できる組織が作れれば、透析導入を回避や導入を遅らせることも可能になるのではないかと考えられます。」その為に関谷先生は腎機能を代替できるような異所性腎組織再構築を目指し、HydroCell®等を使用したスフェロイド作成での腎組織再構築研究を進めています


関谷先生


治療へ結びつく研究を目指して


2015年の冬、自己の筋芽細胞から作られた細胞シートを心臓に貼って治療する技術が製造販売承認を取得しました。細胞シート治療は、角膜再生、食道の狭窄予防治療、歯周組織の再生、軟骨再生、中耳の治療など次々に臨床研究を産み出しています。関谷先生は東京女子医科大学・腎臓内科の臨床医の先生方と、細胞シートを応用した腎臓の新しい治療法開発にも取り組んでいます。「慢性腎臓病患者は日本でおよそ1300万人とされています。不可逆的な腎障害の進行を透析導入手前で食い止められれば、元気に働ける方、通常の生活が過ごせる方が増えるのではないかと思います。近い将来、新しい腎臓病治療が確立できないかと腎臓内科の先生方が診療、研究と昼夜必死に取り組んでいます。このような信念を少しでも後押しし、新しい治療開発に携われればと研究に励んでいます。」と話す関谷先生とセルシード社のUpCell®に、新しい治療法への期待感が高まりました。


UpCell®について


関谷先生はUpCell®について、相棒(パートナー)のようなものじゃないか、と表現されました。 「人間同士でも初めて出会った時は思うようにならないことも多いと思うのですが、歯車が噛みあうと欠かせない存在になっていくと思います。色々な選択の中で、しばらく試行錯誤して付き合っているといつの間にかいつも傍にいる、という印象がUpCell®にはあります。TWInsに来てからUpCell®が常にある状態だったので、無い状況が想像できないのですが、おそらくUpCell®が存在しなければ、現状の研究にはたどり着いてないと思います。UpCell®の使用に慣れないうちは、コントロールが難しいこともあるかもしれません。


Upcellのimage画像


ですが難解な手技は要らないので、困ったときは使用者やメーカーにコンタクトしてみるのがいいですね。よくUpCell®上の細胞シートはPIPAAm(温度応答性ポリマー)ごと剥がれると思われる方がいらっしゃいますが、PIPAAmは培養皿表面に共有結合で固定されて剥がれないので、細胞とその細胞外基質だけが回収されます。


UpCell / RepCell用 thermo plate II

また、UpCell®で培養した細胞シートをインキュベータから外に出した後、普通の培養の感覚で細胞を長時間観察していると培養皿の温度が低下し、UpCell®の培養面が細胞接着性を示す温度ではなくなるので、細胞が剥がれる恐れがありますが、長時間の観察が必要な研究の場合には保温装置(UpCell/RepCell専用ThermoPlateⅡ)があると安心です。」




関谷先生


東京女子医科大学 先端生命医科学研究所 助教

関谷 佐智子先生

薬学博士   専門:組織工学
左から SPEIDEL Alessondra 博士, ALSHAREEDA Alaa Tarig博士, 関谷助教, ALSAYEGH Khaled 博士
同年東京女子医科大学先端生命医科学研究所にて細胞シート工学による心筋組織再生について研究を開始。
海外から細胞シート工学を学びに留学している方々と一緒にTWIns ラウンジにて。




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◀温度制御により簡単に細胞がシート状に回収可能
◀回収した細胞シートは細胞外マトリクスを完全保持
◀細胞に障害を与えるトリプシンが一切不要
◀再生医療研究に用いる組織の培養に
◀ホモ/ヘテロな細胞シートを重ねる3D培養に


株式会社セルシード 温度応答性プレート UpCell®